【バレンタイン&ホワイトデーSS】【番外編】最後の夜に「愛してる」を誓って
「……去年も受け取らなかったよな」

「そうですね。ちなみに、一昨年も」

「じゃあなんで持ってくるんだ」

「それは……断られて自分で食べるのが、恒例行事になってしまって」

呆れて肩を落とした。もはや、俺に受け取ってもらおうという気概さえ失っているのか。

「で? 今年はどんな趣向を凝らしたんだ?」

甘いものは嫌いと言われたから煎餅を、菓子は食わないと言われたからコーヒーを。

そして去年、贈りものは受け取らないと言われた彼女は、今年なにを用意したのだろう。

「はい! 今年は原点に帰ってチョコレートを」

いや、帰るなよ、あきらめろよ、永遠に繰り返す気か? ぐるぐる回って、来年はまた煎餅に戻るのか?

俺の呆れた表情に気づいたのか、彼女は慌ててつけ加える。

「で、でもっ、甘いものが苦手とおっしゃっていたので、ビターにしました!」

いや、そういう問題じゃないだろう。チョコはチョコだから。

……面倒なやつ。
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