僕の1番大切な人
『私ね、もう37でしょ。それなのに、子どもがいないじゃない。それって、やっぱりすごく寂しいの』

お酒の力がそうさせたのか、ずっと知らなかった姉さんの秘密を聞いてしまった気がした。

『子どもがいない人はたくさんいますよ』

ユウが、優しくフォローした。

『そうよね、確かにそう。だけど、本当は子どもが欲しくてね。ずっと望んでいたの、ママになりたいって』

姉さんは、そう言って、またワインを1口飲んだ。


そっか、姉さんは、兄さんとの子どもが欲しかったんだ…


『でも、どんなに望んでも、出来ないものは仕方ないわよね。残念だけど…』

『姉さん...』

『うん、私が原因なの。子ども。産めない体なんだって』

僕もユウも、一瞬、言葉を失った。

『...そうだったんだ。ごめん、知らなくて』

姉さんは、首を横に振ってくれたけど、僕の言葉は、何のフォローにもなっていなかった。

『愛美さん...辛かったですね。でも、俺は、愛美さんは今、本当に綺麗で輝いてるって思います。子どもが欲しい気持ちは、俺にはどうしてあげることも出来ないけど、でも、これからの人生は、愛美さんが輝いたまま、ずっと笑って生きてもらいたいって、そう思いますよ』

ユウの言葉はすごい。

『ありがとう...』

姉さんは、ユウの言葉で少し涙ぐんだ。






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