トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 わかってもらうことを諦めた明日香は、黙って侍女の案内に従った。通された部屋は、夫婦の寝室。大きなベッドに座り、部屋中を見回す。

(いかん、ドキドキしてきた……)

 今までジェイルには言えなかったが、明日香には男性経験がない。妄想の中で戦国武将に抱かれたことはあるが、リアルには、ない。

(今更だけど、大丈夫かな。結婚したあとで「相性が合わなかった」なんてことになったら最悪……)

 突然不安になってきた。しかも相手は日本人ではなく、大柄な外国人。

(ど、どどど、どうなんだろう)

 色々とリアルに想像してしまった明日香は、誰もいないのに両手で顔を覆う。すると、突然ドアがノックされた。

「国王陛下のお成りでございます」

 侍女の声がした。ビクッとした明日香は、シャキンと背を伸ばす。ドアが開き、ガウンを着たジェイルが登場した。

 侍女がいなくなると、ジェイルはゆっくり近づいてくる。

「疲れただろう。どうだ、王妃になった感想は」

 彼の口調はいつも通りで、いっぱいいっぱいだった明日香は少しホッとする。

「王妃だなんて……今まで通り、軍師と呼んでもらった方がしっくりくるわ」

 軽く応対した明日香の隣に、ジェイルが座る。ベッドがその分沈みこんだ。

< 100 / 188 >

この作品をシェア

pagetop