トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 飛び出そうとするジェイルを、兵士たちが必死で止める。

「お前はシステインの王位を狙っていたんだな」

 長年システインの王族に仕えた彼が、王子や国王を暗殺した。となれば、目的は玉座しかないだろう。

「システインをもっといい国にして差し上げますよ。カルボキシルと一緒に」

 優越感に浸るバックスの発言に、ジェイルの怒りは頂点に達した。

(痛み分けしたあの戦い。やはりアスカの戦略がまずかったわけじゃない。バックスが敵軍に情報を流していたんだ)

 ジェイルは制止を振りきり、剣を持ってバックス向かって駆ける。その瞬間、矢の雨がジェイルを狙った。

「陛下!」

 兵士たちが盾を持って後を追いかける。

「ここで戦っている暇はありません! 一刻も早く、システインへ帰るのです!」

「わかっている! が、一太刀浴びせねば気が済まん!」

 ジェイルが地を蹴り、空中に舞い上がる。バックスが素早く銃口をジェイルに向けて引き金を引いた。

 鋭い銃声が兵士たちの耳をつんざく。ジェイルは猫のように体をひねり、紙一重で銃弾を避けた。

「覚悟!」

 振り上げた剣を、バックスの頭目がけて振り下ろす。しかし寸でのところで、バックスは身を引いた。空を切った剣が地面を抉る。

 ジェイルが着地したとき、銃声が連続した。いつの間にか横一列に並んだ鉄砲隊が、敵の弓隊向けて一斉射撃を開始したのだ。

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