リアル人生ゲーム(裏)
「未知瑠」
明るい声でそう呼びかけたのは__友美だった。
呼ばれた未知瑠は、ギョッとしている。
これまで2人が教室で言葉を交わすことはあまりなく、ましてや馴れ馴れしく名前を呼ぶなんて__。
首を回して自分の肩を掴むと、友美が言った。
「肩、凝ってるんだよね」
「だからなによ」
「マッサージ得意なんじゃない?」
「意味が分からないんだけど?」
「だって、親友の彼氏を横取りするくらいだからきっと、マッサージが得意だと思って」
にっこり笑う友美と、言葉を失う未知瑠を、クラスメイトが見守る。
誰もが、面白がっているのが分かった。
様子が変わった強気ないじめられっ子。
「調子のってんじゃないわよ」
未知瑠が凄むと同時に、友美は「爆弾」と短く言った。
それは、効果絶大だ。
「私にもマッサージ、してくれない?」
わずかに首を傾げ、お願い__というより脅迫する友美に、未知瑠はしばらく唇を噛み締めていたが。
諦めたように後ろに回ると、肩を揉みだした。
途端に教室内がざわつく。
これ以上の屈辱はない。
見せしめのように「もっと強く」と指示を出す友美と、目が合った。
いや、合ってしまった。