リアル人生ゲーム(裏)
「食べないんだ?」
へぇーっと、由佳を一瞥する友美。
またあの脅し文句を口にするに違いない。
案の定、友美は由佳の後ろから肩に手を置き、耳元で囁くのが聞こえてきた。
「爆発、してもいいの?」
と。
そのワードは、効果てきめん。
体をびくっとさせた由佳は、瞳孔を開いたまま皿の中を見下ろしている。
その目には、ドックフードしか写っていない。
激しく震えた指先が、お皿に伸びる。
ひと粒のドックフードをつまむと、周りがザワついた。
「マジかよ⁉︎」と口々に驚きの声が上がる。
驚きと、軽蔑が混ざっている。
カーストトップの女王が、その座から陥落する瞬間。
小さく開けた口の中に、犬の餌を押し込んだ。
咀嚼することなく、喉がごくりと音を立てる。
由佳が、ドックフードを食べた。
それなのに「飲んだら意味ないじゃない」と、友美がひと粒、摘んで由佳の口元に持っていく。
「はい、アーンは?」
友美はにんまりと見下ろし、丸く開けられた口にドックフードをねじ込んだ。
がりっ。
今度は確かに、ドックフードを噛んで飲み込んだ。
由佳が顔をしかめたその時、友美は机の上の皿を払った。