恋の宝石ずっと輝かせて
「トイラ、もう時間がない。ユキの痣がもうすぐ満月になってしまう」

 キースはトイラを引き止めるように声を張り上げた。

 トイラはジークを倒すところではなくなった。

 不安な面持ちですぐさまユキの側に引き返した。

 人の姿に戻り、ユキを抱きかかえる。
「ユキ、しっかりしろ」

「トイラ、もう時間がないわ。早く私の命の玉を取って」

 ユキの消え入るような声。

 トイラは決断を迫られ焦ってしまう。

 まだユキを助ける方法がわからない。

 時間もない。

 冷静にもなれず、頭が真っ白になっていた。

 あの時と同じだ。

 ユキがジークに光線をぶっ放された瀕死の状態。

 あの恐怖が蘇る。

 助けを求めようとキースに泣きそうな顔を恥ずかしげもなく見せる。

 キースは側で何もできず、トイラの顔を見ていられない。

 目を逸らし、悔しさのあまり遠吠えを一つ森の中で轟かせた。

 ジークはふと笑いをもらし、コウモリの姿になった。仁の手からするりと離れる。

 仁は逃げられて悔しがった。

 ジークはさっと太陽の玉の側まで近づくと、また人の姿になり、太陽の玉を拾った。

 仁は何もかも自分のせいだと何度も何度も地面を拳で叩いて嘆いていた。

「この勝負もらった」

 そうジークが笑みをこぼして言ったとき、予期せぬ事態が起こった。

 太陽の玉が急に光り出し、そこは目も開けられないほどのまばゆい光に辺りは包まれた。
 
 誰もが唖然として、一斉に太陽の玉を振り返る。

 そしてその後、光は徐々に消えて太陽の玉がジークの手の中で半分に割れてしまった。

「太陽の玉が半分に割れた!?」

 ジークはその割れた玉を手にしながら、驚愕した。

 驚いたのはジークだけではなかった。
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