思いは海の底に沈む【完】
踊り終わる時には周りに人だかりが出来ていた


拍手が鳴る




『わ!いつの間にこんな!』

「いや、物珍しかったのでは?」

『逃げよう!』

「は?」






柊さんの手を取り人混みを掻き分けて走る



走ってる最中、楽しくて笑いが止まらなかった



人が居なくなる所まで来ると息を整えてもう一度笑った




『あっはは!楽しかった!』

「…楽しんでるんじゃないですか」


あ…。
そういえば、楽しいと感じてた

プールの時以来だな



『なんかね、女の子の演技って思うと楽しめるっていうか』

「楽しめたのなら何でもいいですよ。二人のデートなんですから」

『柊さんは?俺ばかり優先して楽しめなかったんじゃない?』

「湊の楽しそうな姿を見られたので満足です」



歩こうと足をあげると踵が痛んでしゃがみこむ


『痛っ』

「湊?…靴擦れですね」


柊さんは軽々と俺をだっこしてベンチに移動させる

足を靴から外してハンカチで止血してくれた

この体勢、恥ずかしいよ




「だから言ったんです!靴擦れをするからと」

『女の子って靴履くのも大変なんだね。勉強になったよ』

「普通は電車に乗り街を歩いたとしても踊ったり走ったりしません」

『そうなの?でも、楽しかったな』

「そうですね」
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