狼を甘くするためのレシピ〜*
『ケイって、キスがとっても』

 ――上手いのね。

帰らなきゃ……。

 私、帰らなきゃ。


 ――ん?

 待てよ? 私、焼きとり屋でお金払ったっけ?


 えーっと。

 それで、今いる場所は……。


 ああ、温かい、やっぱり誰かにくっついて寝るのって気持ちいい。

 幸せな気持ちに浸りながら、目の前の温かいものにぐりぐりと頭をすりつけた。


 ――え?

 そっと目を開けると。

 心臓が止まりそうなほど驚きながら息をひそめた。

 ――なんでこうなった?

 目の前にあるのは、あの男の胸板である。

 そして聞こえてきた男の寝息。完全に爆睡している。

 そっとそっと体を離し、チェストの上のスタンドの薄い灯りを頼りに、眼鏡をかけた。

 息をひそめてベッドから抜け出し、時計を見る。

 午前二時ちょっと過ぎ。

 大丈夫、ここは確か駅前のシティホテルで、自分でチェックインをしたホテルはすぐそこだ。
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