狼を甘くするためのレシピ〜*
 インフルエンサーとしての自覚。
 散々そう言われ続ける世界にいて、身に覚えのない攻撃に晒されても蘭々が絶えられたのは、それ以上の悩みがあったからだ。

 自分ではどうにもできない悩みに押しつぶされて明かす、眠れない夜。
 白々と明けていく陽の光りに照らされてもなお、何も変わらない一日を迎えるという絶望感に苛まれる朝。

 そんな日を、蘭々は子供の頃から乗り越えてきた。

 でも彼女はどうだろう。

 いま目の前にいる彼女は我儘で気が強いが、かと言ってソーシャルメディアの炎上をバネにできるほどの耐性があるとは思えなかった。

 それでも――。

 頑張ってほしいと思う。

 全てを乗り越え、輝く星となってほしい。

 何のわだかまりもなくなぜそう思うのかといえば、自分がもうそこにはいないという郷愁からくる優しさからかもしれなかった。

「がんばってね」
 これから彼女がはじめて経験するだろう様々な苦労を思いながら、蘭々は先輩として心からの励ましを送る。
「ずっと、心から応援してるわ」

「ありがとうございます。LaLaさん」
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