幸福論
忘れもしない去年の冬。


仕事終わりに行った湖で
誰かの隣で月を見上げた。


あの時か。
あの時から俺の中で特別になったんやな。


静かな水面にポツンと浮かぶ月を
君と一緒に見たんや。


何かを話すわけでもなく
ただ隣に座って湖を眺めた。


静かな時間をただただ過ごした。


懐かしいなぁ。
久しぶりに行ってみるか。


来た道を戻り、あの懐かしい場所、
いつもの場所まで走らせた。


着く頃にはもう0時を過ぎて
誰もいない湖が俺を迎えた。


久しぶりのそこは相変わらず静かで
息を吸えば冷たい空気がいっぱいに俺を包む。


イヤホンをつけ、懐かしい場所まで足を運んだ。


腰を下ろし
さっきよりも近くで流れ始めた歌に
目を閉じた。
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