大嫌いの裏側で恋をする


よくわからなくて、秋田さんを眺めたまま黙る。
それを見た秋田さんは更に笑みを深めて。

「興味持ってくれたってことかと」
「…………秋田さんにそう言われると、いやらしく聞こえてしまいます」
「厳しいねぇ、石川ちゃんは」

どう言葉を返すもんかと、ちょっと考えてると私の声を待たずに秋田さんの言葉が続いた。

「まあ、俺は一度失敗してるからねぇ。次はうまくやるかもしれないよ」
「なんのことですか?」

私の問いに、秋田さんが口を開きかけた時。

「石川!」

聞きなれた声の方へ、視線を向ける。
人混みの中でも、すぐに、一瞬で見つけることができる姿。

「高瀬さん!え、なんで」
「いや、返信こねぇし、場所的に来た方が早いかと思って」
「え、一度会社に戻ってたんですか?」

今日は遠方の客先に出向いてたので、遅くなる予定だった高瀬さん。 私の友達とのご飯が終わったくらいにちょうど時間合うんじゃない? と、昨日話していたのだ、電話で。

「ん、直帰するってもお前に聞いてた店、会社からのが近かったし……つーか」

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