大嫌いの裏側で恋をする


最後の数字に触れて、数度コール音。
そして、甘い声。

『お疲れ、石川ちゃん』
「秋田、さん……」
『うん』
「秋田さんの愛し方ってなんですか?」

甘い声と対照的に私は何故か攻め立てるように早口で、聞いた。

「今すぐに、会いたいって泣いてる女を、甘やかすことですか?」

返事を待たずに、また聞いて。

『泣いてるの?』

甘すぎる声は、毒かな。
それでも、縋り付きたくなる。 そんな自分の弱さを嘆いたり責めたり。
私、今そんな強さを持てない。

「今から泣きます」
『ははは、それは大変だね。じゃあ、会いに行こうかな。ちょうど客先出たところだしね』


全部全部思うようにいかない。

ほら、やっぱ。

昔から何も変わらないままだ。

いつも私の隣で幸せそうなあの子と、いつも隣でそれを羨んで目をそらす、私。

騒めく心に蓋をした。

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