大嫌いの裏側で恋をする


「だから〜、そうゆうこと言わないんだよ、石川ちゃん。本気で気が変わっちゃうよ」って困ったように言った、その表情を。

見つめながら。

私は、ゆっくりと、でも力強くドアを閉める。

バタン、とドアが閉まる音。
切なく、そして自分の弱さを責めるように、その後は響いた。

耳の奥から、ぎゅっと入り込んで全身に伝う。
そんな後悔をそのままに。

くるりと、甘い笑顔に背を向けた。

ひんやりとした11月の夜風を切って、一歩。
また、一歩。
数歩進んだ後に、走り出す。
冷たい風が頰にぶつかって冷たい。

だからもっと走る。

(高瀬さん、高瀬さん、高瀬さん――!)

全部見せたら幻滅される?
話したら、嫌われるかな。
でも、どんな結果でも。
曝け出した、その先へ、私は今度こそ。
進みたい。

誰の胸にも恋への恐れが、きっと、あるんだから。

秋田さんにも、私にもあったみたいに。

ねえ、きっと。

高瀬さんにも、見せない心が。

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