大嫌いの裏側で恋をする


「俺さ、マジでお前が好きだから。何か疑うことあっても、いつもそれ思い出せよ」
「は、はい……」
「俺も、嬉しいって言った、今のお前思い出すし、いつも絶対」

頷くと、軽く、抱き寄せられて。
ふわりと、高瀬さんのにおいに包まれる。
ドキドキと心臓はうるさいのに、いつのまにかそこに安心を感じる私になってたみたい。

「あとなぁ、課長。見込みねぇ奴に厳しい言葉は出さない。基本面倒な事嫌いな人だし」

ポンポン、と私の背中を撫でながら言う。

「使えないって自分の中で決めたら、あからさまに見限ってく男だから。あと、どうすれば伸びる人間かを見てる」
「見てる?」
「多分、すぐ後に間宮を褒めたのも、わざと。今頃絶対ワクワクしてるぞ。お前がどう這い上がってくんのか」

え、酷い。と零した私の声の後、高瀬さんの笑い声が続いて。

「だろ?上に立つ人間として、いーのかよアンタ?って俺もよく噛み付いたけど」
「でも仲良しですね」

うるせーよ、と。頬を撫でてたオデコをゴツンと合わせられたというか、ぶつけられて。

「い、痛い!」

そう、非難の声を上げるも高瀬さんは我関せず話を続ける。

「つーか、お前な。ミスはミスだからな。しかもありえねぇ初歩的なミス。それはちゃんと反省しとけよ」
「す、すみません」

優しい声から、今度は仕事中の高瀬さんって感じの、キッパリした声。
自然と私の身体にも力が入る。
< 281 / 332 >

この作品をシェア

pagetop