大嫌いの裏側で恋をする


「会話聞いてると、そんなにうまくいってるようには聞こえなかったけどな。彼氏と」

あ、固まった。
ほら、こんな言葉だけで、走り出して。石川さんの腕掴んで抱き寄せて、自分のものにしてしまいたいって顔。
隠せてないじゃないか。

「会社でいちいち惚気るわけないだろが、あいつのキャラ的に」
「ま、照れ隠しかもね」
「…………照れ……」
「言っといて自分で落ち込まないで」

落ち込んでねーよ!! と、ほぼ叫んでる恥ずかしい大の男を背に俺は新幹線を目指す。
せっかくの整った顔も台無しだけど。

俺はこれでもけっこう本気でお前の恋を応援してるよ。
一緒になって、どこか女の子を見下してた俺たちだけど。お前が、女に嵌って女に堕ちて。
変わってく姿、もし見れるんなら物凄く興味があるから。

そんな恋の行く末を、期待してるみたいだから。

頑張れよ、と。仰いだ空。
残暑まだまだ照りつける、太陽を見た。

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