大嫌いの裏側で恋をする


イラっときてんですけど。とか言ってる時点で、こいつ相当キレてるなと。 
眺めながら思ったから、仕方がない。
気が乗らないが話を進めるしかねーだろ。

俺は、わざとらしく呆れたようにため息をつき、その後、こらもまたわかりやすく石川を睨みながら言う。

「……つーかお前、スマホ見ねぇのかよ」
「は?」
「会社いる時暇ありゃ見てんだろが、課長が言ってたぞ」

「課長見てたのヤバ!」なんて、驚いて。
その後に俺の方をチラチラ見ながら。

「まあ、そりゃ今は高瀬さんと一緒だし別に見なくても困らないってゆーかなんてゆーか」

そう答えた石川が照れたように唇をもぞもぞと甘噛みしている。

「あ? なんだよ、俺が一緒なのが関係あんのか」

「いつもは高瀬さんから連絡きてないかなぁって見てるだけですし、営業行っちゃってる時とか」

「……は?」

ベッドで肘をついて寝転んでいた俺は、衝撃から体勢を崩した。

と、言っても物理的なもんじゃない。
精神的にだ。

(…………こっっ、いつ、マジで!!!)

突拍子もなく死ぬほど可愛いことを言いやがる。
いつもはツンケンしてる癖に、これが計算だとしたらビビるし、天然なら怖い。

「……? なにズッコケてんですか?」

(ズッコケもするわ、アホか、怖いっつーのマジで)

あらゆる意味で負け続けの俺は、精一杯そうじゃないフリを決め込む。

「あ? ふざけんなよ、お前のせいだろが」

いつもの調子で売り言葉に買い言葉。
別に喧嘩をしようってんじゃない。
俺らが普通に会話をすると、テンポ的にこうなる。

こうなることに、最近は慣れてるし、お互いにやりやすい。 

と、思ってる。 とりあえず俺は。

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