大嫌いの裏側で恋をする


「高瀬さんが忙しい時でも、これ見たら簡単だし、私が手伝いたい時も指示出しやすいんですよね?」
「だな。何、田代さんが教えてくれたのか」
「はい! 最近やっと仲良くなれてきて」

嬉しそうな笑顔がやたら眩しいのは、気のせいではなさそうだ。

何かと吉川に追いつきたがっている石川は、その差を縮めたくて急いでいるんだろうけど。

俺としてはもっと出来が悪くてもいい。
悔しそうにしながらも頼られるのは正直可愛いし、なんなら……ささやかな癒しだったりもしたけど。

誰かを心から想うことはイコール変化の繰り返しで。同じであり続けるわけがない。二人で歩くのならば、歩幅もペースも乱れることだってきっと何度もあるんだろう。

自分を納得させるように、そんなことをしみじみ思った。


 ***



「で? 最近妙に頑張ってたの、さっきのファイル作ってたからだろ?」
「え?」

あの後、何か飲むか? と、休憩スペースに石川を連れてきた。
もちろんただこいつの好きなカフェオレ、飲ませにきてやったわけじゃない。

買ってやったカフェオレをおいしそうにコクコクと飲んだ後、石川が答えた。

「まぁ、そうですね」
「仕事いきなりそんな頑張ってんの何でだ。何かあったのか、つーか俺が何かしたか?」

壁にもたれかかって聞けば、無意識にだろうけど目が泳ぐ。

こいつマジで嘘がつけないタイプだ。

「えっと、単純に役に立ちたかったのと、あと、ちょっと」

わざとらしく頬を指で引っ掻き、ぼそぼそと話し始めた。
 
「何」
「この間、ちょっと型番間違えて工場に注文入れちゃったことあって……向こうが気づいてくれたんですけど。また同じようなことして何で気づけないんだろうって、お馴染みですが落ち込んでたんですよね。

「へぇ」

(まあ知ってるけどな……)

特に本人から申告されずとも、大体見てればわかるというか。それだけ、今でも、いつだってこいつのことを目で追いかけているから、なんだけど。

「そのとき体調悪かったのも重なって……ふいにね辞めたいなぁとか思ったんですよ仕事」
「そうなのか」
「そうなんですよ、んで、私何考えたと思います?」
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