『未成年』なんていらない
「正解だよ成瀬。これは危険な薬品なんかじゃない。お前のこと甘く見た俺が馬鹿だったな。すまない。…でもな成瀬。お前はもっと世間を知った方がいい。成瀬の気持ちは嬉しいが、成瀬を幸せに出来る若い男なんていくらでもいる。だから何度も言うが俺のことは…」

閨川の言葉を、ひなりはまた途中で遮った。
今度は言葉ではなく涙で。
けれどそれは決して意図的に流した芝居の涙などではなかった。
もはやひなりの頭には閨川に好かれたい。閨川を手に入れたいということしか無かったのだ。

「私……諦めません……先生のこと…閨川玲眞さんのこと諦めませんからっ…!」

ひなりは閨川の目を真っ直ぐに見つめてそう言うと、理科室を走り出た。
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