mimic
勤務を終え、大学の正門をくぐり抜ける。
コブシの木のピンクの実を見上げ、なんか虫みたいで気持ち悪いな、なんて思いながら歩いているときだった。
「久しぶりだな、小夏」
ぴたりと足が止まる。
わたしを見た相手は、指に挟んだ煙草を地面に叩きつけた。
「ゆ、唯ちゃん……」
会わなかった期間はたった一ヶ月なのに、もう何年もまともに顔すら見ていなかった気がする。
「今日は小夏に話があって来たんだ」
動揺するわたしに構わずに、唯ちゃんはこちらに歩み寄る。
思わず、後退りした。
「短刀直入に言うよ。あの家、返してくれないかな」
返す……?
でも、あの家は……。
「わたしが、相続したんだよ……?」
目一杯喉に力を込める。それでも語尾が震えた。
「でも、さ。それは、俺と小夏、ふたりで力を合わせて生きて欲しい、っていうのが前提で、じいちゃんは小夏にあの家をやるって遺言残しただろ? ってことは、俺にもあの家を好きにする権利はあるんじゃないか?」
さも当然かのように、唯ちゃんはわたしを見て笑った。黒いオーラを醸し出し、狂気的な笑い方でくつくつと。
コブシの木のピンクの実を見上げ、なんか虫みたいで気持ち悪いな、なんて思いながら歩いているときだった。
「久しぶりだな、小夏」
ぴたりと足が止まる。
わたしを見た相手は、指に挟んだ煙草を地面に叩きつけた。
「ゆ、唯ちゃん……」
会わなかった期間はたった一ヶ月なのに、もう何年もまともに顔すら見ていなかった気がする。
「今日は小夏に話があって来たんだ」
動揺するわたしに構わずに、唯ちゃんはこちらに歩み寄る。
思わず、後退りした。
「短刀直入に言うよ。あの家、返してくれないかな」
返す……?
でも、あの家は……。
「わたしが、相続したんだよ……?」
目一杯喉に力を込める。それでも語尾が震えた。
「でも、さ。それは、俺と小夏、ふたりで力を合わせて生きて欲しい、っていうのが前提で、じいちゃんは小夏にあの家をやるって遺言残しただろ? ってことは、俺にもあの家を好きにする権利はあるんじゃないか?」
さも当然かのように、唯ちゃんはわたしを見て笑った。黒いオーラを醸し出し、狂気的な笑い方でくつくつと。