mimic
× − × − ×


休日の午後。
玄関のチャイムが鳴り、わたしが出た。ドアを開けた瞬間、木枯らしが身震いを起こさせた。

ブランド物だと一目でわかる、高そうなスーツを着たスタイル抜群の女性が立っていた。保険のセールス、かな……?

しかし彼女は予想外なことに、「海月、いますよね」と言った。断定的に。


「は、はい……」


からくり人形みたいなみょうちきな動きで、わたしは台所で遅めの昼食である生ハムのホットサンドを作っていた海月を呼んだ。
すると。


「星香」


海月は訪ねてきた彼女を名前で呼んだ。平然と。

わたしは冷静に思った。
ああ、ただならぬ関係だ、と。本能で察した。
だって海月の声が、ほんとうに普段通りで、呼び慣れたトーンだったから。
だから警戒し、わたしは彼女を訝しげに見て、次になにを言われるのか、と身構えた矢先。


「何度私を裏切ったら気が済むの?」


開口一番、彼女は眉間の皺を濃くし、剣のある物言いをした。

睨みつける目力が凄い。強い。
鼻はすうっと高く、目は黒目がちで大きく、睫毛は陰影がつくほど長い。
今まで出会ったうちの誰よりも、彼女は美しかった。もしかしたら人間って、笑ってる顔より怒ってる顔が一番美しいのかもしれない。
瞬きや、息遣いまでも彼女を引き立てる装飾のようで、一挙手一投足にいちいち感嘆し気圧された。


「約束、守ってもらうから」


形が綺麗な唇からは、その美貌からは想像がつかないくらい冷淡な声が出た。
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