mimic
「ごめんね、小夏ちゃん」


言い残し、海月は去って行った。
わたしをとても厳しい目で見た、彼女と共に。


「……え? ホットサンド、は?」


わたしは間抜けな声で呟く。

誰なの彼女は、だとか、どこ行くのよ、だとか。ごめんね、ってなに? とか。
もっとほかに聞くべきことがあったでしょうに、なんとも陳腐な……。まあ、どうせもう出て行っちゃったし、答えてもらえないからどうでもいいんだけどね。

呆然とし、台所に戻る。
冷蔵庫から出したてのチーズと生ハム、お皿にパンは作業台に置かれたまま、コンロにかけた小さなホーローの鍋には牛乳が入ってて、これから火を点けようとした状態で止まっている。

幸福なキッチンの光景の、写真を見てるみたいだった。





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