冷徹騎士団長の淑女教育
「ひとつ、お聞きしてもいいですか?」

「何だ?」

「私もあの子たちと同様、アイヴァン様に救われた孤児です。けれどもアイヴァン様は、どうして私をこの場所に住まわせず、あのお屋敷にお引き取りになったのですか?」

クレアの質問に、アイヴァンは一瞬だけ当惑するような顔を見せた。だがすぐに、いつもの淡白な顔を取り戻す。

「君だけではない。ベンだってそうだ」

「……そうでしたね、レイチェルに聞きました」

つまり、アイヴァンの気まぐれということなのだろうか?

それでも、ベンは庭師として働いている。アイヴァンは、なぜクレアだけに淑女教育を施したのだろう。彼の養女というわけでもないのに、気まぐれにしては不自然な気がする。




そのことについて問うべきか否か考えあぐねていると、

「二日後、城から邸に迎えが来る」

アイヴァンが静かに語り出した。

「城から、ですか?」

「君を新しい住まいに連れて行くよう頼んだ」

アイヴァンの言葉に、クレアは身を凍りつかせた。つまりアイヴァンとの別れは、二日後に迫っているということだ。

じっとクレアを見つめるアイヴァンの瞳は、いつになく切なげだった。

ああそうか、とクレアは理解する。

別れの前だから、アイヴァンはこの度の外出を計画したのだろう。

つまり今が、アイヴァンと過ごせる最後の時間なのだ。
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