冷徹騎士団長の淑女教育
小高い丘にある孤児院からは、この村が一望できた。あちこちに広がる牧場や、点在する家屋が見渡せる。

遠く広がる茜色の空の下に広がる長閑な風景を見ながら、背後の建物から漏れ聞こえる子供たちの笑い声を聞いているうちに、クレアは身に染みるほどの幸福感に包まれた。

子供たちの不幸な境遇を聞いたあとだから、尚更だろう。この国は十年前にバロック王国との諍いを集結して以降、戦争をしていない。平和の尊さを、今更ながら実感する。



「この国は、平和だ」

アイヴァンも、クレアと同じことを考えていたようだ。唐突にそう言われ、クレアは深く頷いた。

「それは今の国王が、戦を好まないからだ。陛下は、他国のように領土を広げることに野心を燃やすのではなく、民の平和を一番に願っている」

アイヴァンの口ぶりから、彼が現国王を崇拝しているのが伝わってくる。

「この先君主が代わったとしても、その考えは変わってはならない。ここにいるような子供たちを、増やさないために。そう思わないか?」

諭すようなアイヴァンの口調から、クレアは察する。アイヴァンのこの言葉もまた、淑女としての教育の一環なのだ。

「はい、そう思います」

クレアは、真っすぐにアイヴァンの瞳を見据える。上出来だ、とでも言うように、アイヴァンは口角をわずかに上げて微笑んだ。
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