冷徹騎士団長の淑女教育
行き場のない気持ちを処理しきれず、気づけばクレアはこんなことを口にしていた。

「アイヴァン様、お願いがございます。明日、一人で外出したいのです」

ささやかな反抗心だった。クレアも、アイヴァンの知らない自分の世界が欲しいと思った。アイヴァンはクレアに外出を許さないのに、自分だけ好き勝手してズルいと思う。

今までも数回わずかな時間だけ外出したことはあったが、常にレイチェルが一緒だった。



案の定、アイヴァンの表情が険しくなる。

「……どこに行くつもりだ?」

「教会でございます。以前の家でも、日曜日の教会に行くのだけは許してもらえていました」

「一人で行く必要はないだろう。レイチェルを連れて行けばいい」

「私だって、一人の時間が欲しいのです。それに、教会までは歩いてすぐではないですか」




アイヴァンに対して、こんなに食って掛かったのは久しぶりだ。

冷たい目で睨まれても、負けるものかとクレアは凛と前を見据えた。

二人の無言の攻防戦は、しばらくの間続いた。クレアの頑ななな決意に、ついにアイヴァンが折れる。

「……分かった。ただし、一時間で帰るんだぞ」

「本当ですかっ!?」

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