冷徹騎士団長の淑女教育
外に出れば、空は茜色に染まっていた。

いつもであればアイヴァンが来るのを待ちわびている時間だが、今日彼は来ない。

寂しさが胸にこみ上げてきたが、仕方のないことだと自分に言い聞かせる。

そして長居はしないというアイヴァンとの約束を守るべく、クレアは家路を急ぐことにした。



教会前の広場を横切っている時のことだった。

クレアは、噴水脇で同じ年頃の少年が三人話をしているのを見かける。

きっと、このあたりの別荘を訪れている貴族の子供たちなのだろう。どの子供も、上等の服を身に着けていた。

何の話をしているのかは分からないが、時々笑い声を上げたり、肩を叩きあったり、とても楽しそうだった。



クレアは、自然と歩みを緩めてそちらを見ていた。

語り合い笑い合える友人がいる彼らを、うらやましく思ったからだ。

クレアは今まで、友人と呼べる人間がいたことがない。以前の邸には同じ年頃の子供は働いていなかったし、アイヴァンの別宅に移ってからも、レイチェルかアイヴァン以外と接したことがない。

(私も、仲間に入りたい……)

同じ年頃の子供たちは、どんな話をするのだろう?少しだけ切ない気持ちになりながらそんなことを考えていると、少年の内の一人がクレアに気づいたようで、声を上げた。

「見ろよ、子供がいる。見かけない顔だな」

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