冷徹騎士団長の淑女教育
「なんだ、あの格好? 不気味だな」

しまったと思ったが、時すでに遅かった。少年たちの興味の矛先は、完全にクレアに向いるようだ。

(顔を見られちゃいけない……)

クレアは慌てて走り去ろうとしたが、少年たちの方が行動が早かった。あっという間にあたりを囲まれ、逃げられない状況に追い込まれてしまう。



「お前、どこの邸の子供だ?」

「………」

「口が聞けないのか? ますます怪しいな、顔を見せろよ」

あっと思った時にはもう、少年のうちの一人にショールをはがされていた。

クレアの大きな褐色の瞳と結い上げた赤髪が、少年たちの前にさらけ出される。



きっと、クレアの醜さに驚いたのだろう。

少年たちは固まったように、クレアの顔をまじまじと見つめている。

(どうしよう。顔を見られた……)

他人に顔は見せないと、アイヴァンに誓ったのに。クレアはどうにか顔を隠そうと、両手で口元を覆った。

すると、一人の少年が「あっ!」と驚いたような大声を上げる。そして、クレアの手元を指差した。



「見ろよ、この痣! まるで悪魔の印みたいだ!」

すると、それに続くように他の少年たちも声を上げ始めた。

「本当だ! 呪いの紋様だ」

「こいつ、魔女の子なんじゃないのか? だからこんな黒っぽい服を着てるんだよ」
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