冷徹騎士団長の淑女教育
――ガサッツ!!

その時、激しく木の葉を掻き分ける音がした。

何か大きなものが、青々とした近くの茂みから弾丸のように姿を現す。

「………!」

二重の驚きに思考が追い付かず、クレアはエリックに手を取られたまま茂みの方へと顔を向けた。

そして、目を丸くする。

「アイヴァン様……!?」




それは、今ここにはいるはずのないアイヴァンだった。

銀の刺繍の施された群青色の騎士団服に、漆黒の下衣。城に出仕する際の、いつもの装いだ。

アイヴァンの方でもクレアとエリックの存在に驚いているようで、いつ何時でも冷静な彼が、動揺した目をしていた。

アイヴァンの視線が、クレアからエリックへ、そしてエリックの口元に添えられたクレアの指先へと移動する。

瞬間、漆黒の瞳に凍てつくような緊張が走った。




アイヴァンの動きは、素早かった。

長い足を繰り出し、疾風のようにこちらへと近づいたかと思うと、次の瞬間にはエリックの胸倉をむんずと掴んでいた。

そしてクレアから引き剥がすなり、その身を地面に叩きつける。その衝撃で、地面がドンッと重く揺れた。

クレアの耳から外れた檸檬色の花が、地面に零れ落ちる。

「いった……っ!」

エリックの声が悲痛に響いた。







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