冷徹騎士団長の淑女教育
エリックが微笑む。きっと花のことを言っているのだろうと、クレアは思った。

「似合ってる」

「ありがとう」

照れたように笑えば、「ねえ、知ってる?」とエリックが畳みかけるように問いかけてくる。

「その花は、さっきまで僕が蜜を吸っていた花だ。つまり僕は今、君の耳に間接的にキスをしていることになる」

「そうなの?」




相変わらず、面白いことを言う人だ。クレアが笑いながら耳に刺した花を取ろうとすれば、「取らないで」とエリックがクレアの手首を捉えた。

優しく捉えられているようでいて、にじみ出るような力強さがあった。

唐突にクレアは、エリックが異性であることを自覚する。クレアの微かな動揺を知ってか知らずか、エリックが悪戯な笑みを浮かべた。

「そして僕は、出来れば間接的にじゃなくて、直接君にキスしたいって思ってる」




ドクンと、クレアの心臓が大きな鼓動を打った。

本能が、無意識のうちに危険を知らせる。

咄嗟に、逃れなきゃと思った。だが力及ばず、エリックはクレアの白い手を、自分の口元に引き寄せた。
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