君等の遺した最後の手紙は。(仮)

「未侑ー、電気消すよー」
「はーい」
読んでいた本に栞を挟み、閉じて就寝体勢に入る。
カチカチカチッと電気が落とされてごそごそとお姉ちゃんが隣で布団に入る音がする。
「…初恋かぁ……」
擽ったいような嬉しいような不思議な感情。ふふっと照れ笑いしてしまう。
「嬉しいの?」
「うん、なんかちょっとね」
ふわふわ甘くてくすぐったい。物凄く美味しいお菓子を見つけた気分だ。病みつきになりそう。

「初恋か…なんだか懐かしいな…」
くくっと含み笑いが聞こえる。
「そう言えばお姉ちゃんの初恋は?」
聞いたことがなかった、本当に。
「んー、中学の時かな…クラスに八瀬(はせ)っていく隠れイケメンがいてさ…その先輩が好きだった。未侑も知ってるでしょ?八瀬 ひなた。いっつも眼鏡で物憂げに本読んでんだけど眼鏡外して上向いたらめっちゃかっこよくてさ、しかも性格もいいんだよ!やばくない?ってことですごい好きになってさ…未だに好きなんだよねー…高校も地味に一緒だし。」
うんうん、と時折相槌を打ちつつお姉ちゃんのときめき話を聞く。

「だから今度告っちゃおうかと思って。かれこれ4、5年抱えてきた想いだもん。無駄にしたくないんだぁ…」
そう言って天井を仰ぎみる。
「すごいね…」
告白なんてたいそれたことを姉は計画している。そう考えると感嘆の声を上げてしまう。
「えへへ…体育会、成功したら告白しようかなって思ってるの。」
「そうなんだ…じゃあ未侑体育会実行委員がんばるね!」
「うん!いい体育会にしてね!」
「うん!……そろそろ寝よっか、明日もあるし。」
「そうだね。おやすみ。」
「おやすみ〜!」
なんとなく希翔君のことを考えながら、すっと眠りに落ちて行った。
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