約束~悲しみの先にある景色~
息を整えながら、必死にお父さんにされた数々の虐待の思い出を、今だけで良いから脳内から消し去ろうと自分に言い聞かせた。



例え、キムさんやキムさんの息子さんを昨日の様にお父さんに重ねてしまったとしても、何が何でも絶対にお父さんの事は私の口からは言わない。


昨日キムさんに伝えた事は、きっとキムさんが彼の息子さんに伝えてくれているだろう。


私が話すお父さんについての情報は、必要最低限の事だけ。


話したら、きっと苦しくなる。


誰の前であろうと、涙が止まらなくなる。


だから、何があっても、今のうちは、キムさんやまだ見ぬキムさんの息子さんと打ち解けるまでは。


自分からお父さんの事を話すのは、控えよう。


もしも、キムさんが息子さんに私の前のお父さんについて伝えていなかったら…。


その時は、本当に打ち解けられて本当の家族の様になった暁に、キムさんの息子さんに伝えるまでだ。




「…っ、よし」


色々考えた挙句、何とかお父さんの事を頭の中から押し出した私は、体制を整えて自分の家へ向かおうとした。


と、そこで。


「おおっ、…!」


ふと視界に映った駐車場の近くの1台の車を見て、私は思わず感嘆の声をあげた。
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