約束~悲しみの先にある景色~
文化部なのに、体育の授業は余り好きではないのに、それでもこんなに走った私を褒めて欲しい。


競歩のせいでマフラーははだけ、寒くて着ていたコートのボタンは走っている最中に暑すぎて自ら開けてしまった。


「あーもう無理、辛ぁっ……」


両膝に手をつき、私ははぁはぁと浅く呼吸を繰り返す。


(待って…呼吸、整えてから、家行こう……)


3人を沢山待たせているのは本当に申し訳ないけれど、流石に家に帰ってから息を整えるのは駄目だと思うから。


(それにしても、体力無さすぎでしょ私)


そう自分に呆れながら、頭の中をぐるぐると支配しているのは。


輝星の説明してくれたpromiseの事と、キムさんの事と、キムさんの息子さんの事と。


そして、何故か今は刑務所に居るお父さんの事だった。


(げっ!…無理無理無理お父さんの事は忘れないと忘れるの忘れて忘れたよねうん忘れた)


今まで少し暑いくらいだったのに、お父さんの事を考えた瞬間に一瞬にして足元から悪寒が走る。


そして、お父さんの事を忘れようとする事について自問自答を繰り広げた私は、


(叩かれたのも蹴られたのも窒息しかけたのもお風呂の中に沈められたのも身体中縛られたのも、裸にさせられて沢山触られたのも色々投げつけられたのも酷い事ばかり言われたのも、全部知らない知らないとにかく何も言っちゃ駄目)
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