約束~悲しみの先にある景色~
方向音痴にも程がある。


「南口南口…、あ、ここだ!」



そんなこんなで、電車を降りてから約15分後。


遂に改札口に辿り着いた私は、吹いてきた風が教える予想以上の寒さに身震いをして、赤と黒のチェックのマフラーを巻きながら外に出た。


(交番…。交番ってどれ?これかな?)


外に出て左斜め前を見ると、そこには“梅川交番”の文字が。


トユンさんの言った通り交番は見つかって、次はトユンさんの乗っている車を…。


(探そ、)


探そうとして、道端に停めてある車に目を向けた瞬間。



「もしかして迷ってた?ちゃんと説明してなくてごめん!」


最近聞いた声と共に、私の“両肩”に、手が置かれた。




「ひっ…………!」


(お父さん、)


それと同時に、頭の中を高速で駆け巡る父親との記憶。


包丁を突きつけられて、そのまま右首を切られて。


虚ろな瞳をこちらに向けた彼が、慣れた手つきで傷口に塩を塗って。


痛みに悶え苦しむ私を見て、お父さんは薄ら笑いを浮かべる。


それは、昨日見た夢の続き。


私の、厳重に保管してきた記憶の一部。


あの夢は私が実際に体験した事だから、私は、お父さんから切りつけられた後に何と言われたかはっきりと覚えている。
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