約束~悲しみの先にある景色~
それが自分の記憶だという事にも気付かない程、私は自分の世界に閉じ込もってしまっていた。


目の乾燥と溢れる恐怖が溜まりに溜まって、知らぬ間に水滴が頬を流れ落ちていて。


(ごめんなさい、何か悪い事をしましたか、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!)



身体が小刻みに震え始める。


「ごめんなさい、!」


そして、また私が何度目かの謝罪の言葉を口にした時。



「あれ、泣いてる?どうしたどうした、何で謝ってるの、」


私の頬を、誰かが温かい両手で包み込んだ。


(……あれ…、この声、トユンさんだ)


彼の声が耳に届いて、私がその声の持ち主を理解した瞬間、瞬く間に真っ暗だった視界に光が差し込んで。


段々と焦点が合っていく私の目の前には、黒いマスクに伊達眼鏡という格好のトユンさんの顔があった。


「驚かせ過ぎちゃったかな?ごめんね、まさか瀬奈ちゃんが泣いちゃうなんて思ってなくて」


それとも、電車の中で誰かに嫌な事された?どっちにしてもごめんね、ほら泣かないで…、と、トユンさんは親指で私の頬を伝う涙を優しく拭った。


彼の目線が、私の目をかちりと捉える。


「っ、ごめんなさ……」
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