迷子のシンデレラ
部屋へ足を踏み入れると窓いっぱいの煌びやかな夜景に息を飲む。
「喜んでもらえたかな?
ほら。シャンパンでも飲もう」
視線を窓から手前のテーブルへ移すとウェルカムシャンパンがクーラーの中で冷やされていた。
智美を近くのソファまでエスコートした彼が優美な仕草でシャンパンボトルを手にした。
「あの、私、そんなに飲めなくて……」
不躾な断りの言葉も彼にかかると違う意味になってしまう。
「そう言って僕を弄ぶんだね」
マスクの隙間から覗く双眼が細められて挑戦的に弧を描く。
「そんなつもりじゃ……」
彼は手慣れた手つきでボトルのキャプシールを外し、コルクのワイヤーを緩めた。
コルクを指で押さえながらボトルを回していく。
その一つ一つの所作はどれも美しく、見惚れているうちに開栓されたボトルからグラスへシャンパンが注がれた。
グラスの中で気泡が弾け、美しい桜色のスパークリングワインがグラスの1/3程度まで注がれた。
ボトルをクーラーへ戻した彼はグラスを手にする。