迷子のシンデレラ
グラスへ口をつける薄い唇。
グラスを傾け、上下する喉元。
色気漂う彼を見つめていると「君は僕を瞳で犯すつもりかい?」と視線を寄越した。
否定することは叶わなくて、肩に回された手に体ごと引き寄せられた。
そして、唇を重ね合わせる。
ほんのり爽やかな甘い香りが智美の唇を覆った。
「どう?
こういう楽しみ方もいいだろう?」
今度はスパークリングワインを口に含んだ彼が智美の口の中へと流し込んだ。
ほんの少しのアルコールと彼の色気にふわふわと体が浮遊する。
「君、名前は?
いつまでも君ではあまりにも色気がないじゃないか」
恵麻、とは名乗れない。
恵麻に迷惑がかかってしまう。
かといって、智美とも名乗れない。
目を伏せて小さく問う。
「あなたの、お名前は?」
「僕かい?
僕は……ジョージかな」
考えあぐねた先の『ジョージ』という名を聞いて、智美は口を開く。
「それでは、私はシャーロットと」
智美の答えを聞いて彼はフッと息を吐いた。
「ジョージとシャーロット。
イギリス王室の王子と王女ってわけだね。」