迷子のシンデレラ

「えぇ。だって私は昨日、あの場にいるべき人間じゃなかったのよ。
 だからいいの。」

 マスクをしていたからこそ彼が素敵だったのかもしれないが、それは夢なのだからそれはそれでいい。

 だからこそ、夢は夢のままでいいのだ。

「そう。智美がそれでいいならいいの」

 これでいいんだ。これで。
 自分に言い聞かせるように心の中で何度も唱えた。

 不安になるといつも胸元の指輪を確認していたそれはもうない。

 胸の前で両手をギュッと握り合わせて昨晩のことは忘れてしまおうと心に決めた。

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