迷子のシンデレラ

 恵麻と待ち合わせをしたビルでドレスを返し、カフェへと来ていた。
 騒めく店内で興味津々な表情で向かいに座る恵麻へ声を落として報告する。

「実は……」

「えー! 嘘でしょ?
 智美が? 信じられない」

 端折って伝えても『一夜を共にした』と言えば、いい大人の男女がただお喋りをして過ごしたとは思わないだろう。

「私だって信じられないわ。
 昨日は……どうかしてたのよ」

 シンデレラの様に変身させてもらって。
 夢のように素敵な男性に手を引かれた。

 ほんの少し思いを馳せるだけで顔が熱くなる智美を見て恵麻はため息混じりに言った。

「彼に落ちちゃったってわけね」

「そう、かもしれないわ。
 けれど昨日のことは夢でしょう?
 それでいいのよ」

「本当に?」

 恵麻の大きな瞳が智美を逃さないとばかりに真っ直ぐ見つめた。
 心の中まで見透かされそうな気持ちになって、そっと目を伏せて胸の内を告げた。


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