愛しい君を殺したのは誰?
『隼人(はやと)!遅刻しちゃうよ』

『ちょっと待って、奏(かなで)』

僕らは大人になって、東京のマンションの隣同士の部屋に住んでいる。

会社も同じで、一緒に出勤しているから、毎日のように顔を合わせている。

だけど、恋愛感情は…

奏には、無い。

そう、僕だけが、いつの頃からだろうか、もうずっと長いこと...

奏に秘めた想いを寄せている。

気づかれることの無い、少し、悲しみにも似た感情。

『鍵閉めた?早く行かないと電車でちゃうよ』

僕らは、大手の出版社に勤めている。

子どもの頃、いつも2人で大好きな絵本を読んでいた。

それが、いつしか、お互いの夢になった。

こんな本の世界に携われる職業に就きたいねって。

一緒の仕事に携われたことは嬉しいけど、僕らはそんな絵本の中の王子様とお姫様のような、ピュアな恋愛にさえ発展しない…

僕の気持ちは、決して開けてはならない秘密の小箱に、ギュッと押し込めて隠していたんだ。















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