愛しい君を殺したのは誰?
僕は、山下さんに深々と頭を下げてお礼を言った。

居てくれて良かった。

でも、ごめん、奏。

君の悲しい過去を、僕は、引きずり出してしまった。

僕の記憶からも消そうとしていた、思い出したくない過去を…

ただ君と遊んだり、勉強したり、笑ったり…

そんな思い出だけを持って生きてきたのに。

きっと、僕も奏も…

もがき苦しんだ分、そこから逃げようとしていたんだろう…

目を逸らしてきたんだ、恐ろしい現実から…

僕は、もう、ここにいたくなかった。

急いで、東京にもどった…

それでも、もう夜になっていた。

星のない夜空…

僕は、仕事に行っていたように、疲れた顔をして、奏の待つ家に帰った。

昨日の奏でないことを…

祈りながら。



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