胎動
月明かりに照らされて見慣れない家具が見える。


それらを確認して、ホッと息を吐きだした。


「怖い夢を見たの……」


「うなされてたよ」


透がそう言い、あたしの額に浮かんだ汗をぬぐってくれた。


こんな風に、夜誰かが近くにいてくれることも、今までなかった。


「透、手を握っててくれる?」


そう聞くと、透はクスッと笑みを浮かべた。


少し子供っぽかっただろうかと、恥ずかしくなる。


「わかった」


透の手の温もりが、さっきの嫌な夢をかき消してくれるようだった。


「ありがとう。こんどはゆっくり眠れそう」


あたしはそう言い、再び目を閉じたのだった。
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