胎動
「ごめん。黙ってたけど、透から教えてもらったの」


そう言われて一瞬頭の中は真っ白になった。


透が梓になにを教えたのか、聞かなくても理解できた。


「あたし、ずっと待ってたんだよ。友里がもっと自由になれるのを」


「そんな……全部、知ってたの?」


その質問に梓は頷いた。


「友里は長い間縛られてきたから、自分から行動を起こせなくなってたんだよね。それでも絶対に、その鎖を自分から引きちぎる日が来ると思ってた」


梓や夕夏は、あたしが誘いに乗らないことを知っていて何度も声をかけてくれていた。


2人とも、あたしのことを思っていてくれたのだ。


その事実に胸が熱くなるのを感じた。


1人で耐えなければと思っていたけれど、あたしのいる世界はもっと暖かいのかもしれない。


「お金のことは気にしないで。今日はあたしが奢ってあげる」


梓はそう言い、あたしの腕に自分の腕を絡めて歩き出したのだった。
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