胎動
「いいからいいから、早く」


躊躇するあたしの背中を押して、試着室まで移動する梓。


あたしは渋々試着室に入った。


制服姿でこんなところに来て、服を試着しているなんて夢みたいだ。


本当なら今頃宿題を終わらせて洗濯物を取り込んでいる頃だろう。


そんなことを思いながらスカートを脱ぎ、ズボンを穿いてみた。


「あれ?」


しかし、途中でひっかかって上まで上がらないのだ。


ズボンのウエスト部分はゴムになっていて伸びるのに、太ももから入らない。


「友里、はけた?」


試着室の外からそんな声が聞こえてきてあたしは「ううん。やっぱりやめとく」と、答えてズボンを脱いだ。
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