キミガ ウソヲ ツイタ
そんな気持ちで新年度が始まったばかりの4月3日火曜日、偶然仕事の終わる時間が同じだった佐野が週末でもないのに飲みに行こうと誘ってくれた。

葉月との仲はたいして進展していないのに、よく帰り時間が一緒になる佐野とは二人で食事なんて珍しくもないほど仲良くなっていた。

佐野は同期の中でも気が合って一緒にいてラクだし、男友達と同じような感覚だったから異性として意識したことは一度もなかったけれど、たまに“佐野と仲がいいみたいだけど付き合っているのか”と同僚に尋ねられることがあった。

他の同僚はともかく、葉月にも誤解されていたりはしないかなと少し気になり始めていたのでどうしようかとも少し考えたけれど、理由もなく断るのもおかしな話だなと思っていると、“伊藤くんも誘って”と葉月が言ったと佐野が言うので、二つ返事でOKした。

佐野とは帰る方向が違うので、帰りの電車は葉月と二人きりになる。

これまで一度も告白なんてしたことはなかったけれど、このまま黙っていてもきっとただの同僚で終わるだろうし、遠回しにアプローチしても葉月には通用しないと“偽誕生日作戦”で学んだ俺は、どうせフラれるなら悔いのないように、ダメ元で潔く“好きだ”と伝えて玉砕しようと決心した。

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