キミガ ウソヲ ツイタ
付き合い始めた頃は二人でいることに慣れるのに必死だった分だけ余計なことを考えずに済んだけれど、半年も経って恋人らしくなってくると、お互いが相手を好きであることは間違いないのに、ほんの些細なことで小さないさかいをくりかえすようになった。

誤解や気持ちのすれ違いから生まれた溝を修復してはどれほど相手を想っているかを再認識して、誰にも渡したくないという気持ちが強くなる一方で、俺はいつもどうすれば穏やかな気持ちで葉月と想い合えるのかを悩んでいた。

きっとそれは葉月も同じだったんだと思う。

だけど葉月は恥ずかしさが邪魔をして素直になれないのか、俺を好きだという気持ちをハッキリと言葉にしてはくれなかったから、俺は葉月を本気で好きな分だけいつも不安だった。

付き合い始めて1年半と少しが経った入社4年目の秋の終わり、俺も葉月もそんな日々に少しずつ疲れ始めた頃、俺に支社への異動の辞令が出された。

辞令を拒否することはできないけれど、葉月を離したくない。

だけどこんな状態で遠距離恋愛ができるとは思えないから、俺の中では結婚するのが一番なのではないかという結論に至った。

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