模擬彼氏
しばらく離れると、寺原は、私の方を振り向いた。

「直ぐ、カードを出さない。」

「だって私、現金持っていないもの。」

寺原は、ガクッと項垂れる。

「なるほどね。紗雪とデートする時は、財布の中に気をつけるよ。」

「ええ?どう言う事?」

意味が分からない私に、寺原は笑顔だ。

「何でもない。行こう。」


そう言われて、ジュースを買った後、映画館の席に着いた。

暗い中、隣に寺原がいる。

長い足を組んじゃって、なんだかカッコ良く見える。


その時、寺原と目が合った。

「ん?」

スクリーンの明りに照らされて、寺原の顔が、はっきり見える。

「ううん。」

首を横に振って、前を向いたけれど、それから映画が終わるまで、ドキドキが止まらなかった。
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