かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
彼は二階の窓が開いた音に気づいて、スマホを耳に当てたまま振り仰ぐ。

『出て来なくていいよ。湯冷めするぞ』

そう言って、しっしっと追い払うような仕草をされ、私は渋々部屋の中に引っ込んで窓を閉めた。

『顔を見て話がしたいと思って、会社帰りに寄ったんだが、タイミングが悪かったな。ちゃんとアポを取るべきだったよ』

どうやら苦笑いを浮かべているようで、受話口からフッと困惑気味の吐息が漏れる。

わざわざ会わなきゃ話せないような大事な話があったのだろうか。どんな内容か、さっぱり予想がつかなくて、余計に緊張が止まらない。

『突然押しかけて悪かったな。また連絡する』

そう言って、電話を切ろうとする颯志くん。

「ま、待って」

咄嗟に引き留めてしまったのは、きっと彼以上に私自身が話をしたいと願っていたから。
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