マイ・ディア・タイガー




 県大会は予選で敗退してしまい、先輩達は部活を引退することになった。

県大会結果のミーティングを終えると先輩達は放課後部活に来なくなる。

相変わらずマネージャーの先輩達はたまに顔を出す程度だが、3年生の引退で部員が減ったのと、虎頭先輩にあれこれ仕事を与えられない分、私にとっては苦ではなかった。

むしろ、部員に言われる前にやることは全て終わらせている。

1人でこんなに手際よく仕事して本当にすげえよと、新部長の田中先輩やたくさんの部員に言われた。

3年生がいる時はそんな実感はなかったが、虎頭先輩にしごかれ続けた1学期は、先輩に怒られたくない一心で私は無我夢中で仕事をしてきた。


たった3、4ヶ月でこんなに仕事ができるマネージャーになれたのは、虎頭先輩のおかげなのかもしれないと、先輩がいなくなって初めて気づいた。





 面倒見のいい他の数人の先輩達はたまに部活に顔を出してくれる。

その中にはいつも虎頭先輩がいた。



「…お前、どうしたのその足」

「これはその…体育で挫いてしまいまして…」


情けないが、運動部の癖に運動音痴の私は体育で転んで捻挫をするという何とも間抜けな怪我を負ってしまった。

左に比べ右足首が明らかに腫れている。


注意力が足りない、マネの癖に体調管理不足だと罵られるかと思ったが、恐る恐る虎頭先輩を見上げると彼は目を見開いていた。


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