マイ・ディア・タイガー
「バカかお前。そういう時は安静にしてろよ」
バカかお前、と言われたのでてっきり私の鈍臭さをバカにされたのかと思ったが、全然違った。
むしろケガを気遣うような口調に、思わず私も目を見開いた。
「で、でもそしたら仕事が溜まってみんなに迷惑かけてしまいますし」
「あほか。仕事できない奴がサボったらふざけんなって思うけど、四條はケガで休むくらいで文句言われねえよ。文句言われるような奴だったら4ヶ月近くも構って仕事できるように育てねーよ」
「え…」
「迷惑かけると思ってんなら、周りに気ぃ使わせないでちゃんと休んで、早く捻挫治せ」
虎頭先輩、私のこと育ててくれてたんですか?
あれは嫌がらせとか私で遊んでたわけじゃなくて、みんなに文句言われないくらいに仕事ができるように鍛えていてくれてたんですか?
「捻挫は癖になるから気を付けろよ。田中には俺から言っとくから今日は帰れ」
「えっでも…」
「俺の言うこと聞けねーのか」
「い、いえっ!それじゃあお先に失礼します!」
何だ何だ何だ。虎頭先輩、どうしちゃったの。
何か今日の虎頭先輩ちょっと優しくないですか?
私は足を引きずりながら、ゆっくりゆっくり家までの道を歩きながら、ずっと虎頭先輩のことばかり考えていた。