マイ・ディア・タイガー
「あの、私重いですよ…」
「サッカー部の脚力なめんな」
「す、すみません。お願いします…」
ほぼ強引に自転車の荷台に引っ張られ、鈍臭くお尻をぶつけた。
横向きで乗るのはどうしても怖かったので、足を広げる形になってしまうが、渋々後ろの荷台に跨った。お尻が痛い。
「家どっち?」
「えっ、えっと、虎頭先輩はどちらなんですか?」
「四條に聞いてんだけど」
「す、すみません!私は南ヶ丘なんですけど、でもあの、そこまで送っていただかなくても虎頭先輩の都合のいいところまでで…」
「わかった。掴まってて」
「わっ」
自転車が進み出し、私の上半身は傾く。
慌てて先輩のワイシャツを掴んだので、先輩のワイシャツの裾がズボンから出てしまった。
背中、大きいなあ。同学年で急に背が伸びた男子はいるけど、先輩の背中はがっしりしててやっぱり同学年の男子とは違う。
虎頭先輩の背中がすぐ目の前にある事に、私は心臓がとても大きく動いている。
それは好きとかそういうのではなくて、中学生になって、大人っぽくて格好いい先輩とこんなに近くなれば、多少性格や態度に難があっても格好良く見えてしまうのだ。
私はクラスの男子ともあまり話す方ではない。
そんな私がサッカー部のマネージャーをしている事に友達も、自分自身ですら驚いている。
最初は部員とも全然話せなかった。辛うじて必要最低限のみ話すだけで、この先もずっとそうだと思っていたし、むしろ早く部活を辞めようと思っていた。
だけど虎頭先輩が、厳しく接するだけでなく軽い冗談を言ってきたりくだらないおふざけをしてきたり、横暴な中でも私にそういう態度で接してくれたので、他の部員も気を使わずに接してくれて、私もサッカー部の中では冗談を言ったり笑い合ったりとできるようになった。